経営者6タイプについて

経営者6タイプについて

経営者には6タイプいる。

その経営者の6タイプとは

  1. 財テクタイプ(金):これからのソフトバンク。証券会社なども典型。
  2. オペレーションマネジメントタイプ(物):TOYOTA、Amazon
  3. 人材マネジメントタイプ(人):理念経営している企業全般。Zappos、松下、京セラ、TEAR(葬儀社)、多くの日系企業(美容院とか)
  4. ビジネスモデルタイプ(仕組):典型的にはDRM(通販など)が該当するが、人や物を活かす「仕組」で勝負するタイプ。他にはマイクロソフト、関西の大手カラオケチェーン「ジャンカラ」や、ジャンカラがプロデュースする旅行「湯快リゾート」などもこれに該当する。
  5. 商品開発タイプ(知):典型的にはApple、他にはGoogleなど。1商品か2商品の商品に抑えて、その商品力の1点突破を行う事が特徴。
  6. インフラタイプ(政治):太陽光、大手ゼネコンなども相当か。何もしないことが戦略にもなりうる、特殊な領域。これらは起業家とは違うが、一つの経営者のタイプと言える。

以上6タイプだ。

これらを分類する3つの軸もあり、図の通り図解されるから見ておくと良い。(ついでに一度自分で書いておくと使いこなせるので便利)

これらから得られる示唆がいくつかある。

以下、ちょっと長くなるが順番に紹介しよう。

1:組織マネジメントタイプは成長産業に適するが、不況産業には適さない。戦後日本は、組織マネジメントに寄り過ぎた。そもそも組織マネジメントとは、「事なかれ主義」に陥りやすい。

成果や目標が既知であり、戦略不在でも成長する場合に、従業員をクリエイティブというよりは、与えられた目標を達成することだけを考えさせうまく動かすことで成長するタイプである。

失われた20年というが、成長産業以外の不況産業でこのタイプが成長するのは少し難しい。

反面、成長産業ではこの組織マネジメントタイプは抜群の強さを発揮する。

たとえば、葬儀屋で名古屋で初上場し、最近東証1部に昇格した葬儀社のTEAR。

これは、富安社長という人が、中途社員一人のためにも面談を開き、「お前さん、ちゃんと親に感謝しているか?

親に感謝する人が葬儀屋をやる資格があるんだぞ」と、理念・考え方を徹底的に叩き込む。

これは葬儀産業のような成長産業には抜群のマネジメントで、社員が一つの方向に向かうことで瞬く間に成長し、創業9年で上場、さらに数年で1部上場を果たした。

従って、組織マネジメントタイプで邁進して不況に陥った日本企業は、次のビジネスモデルタイプに移行する必要がある。

2:ビジネスモデルタイプは、成熟産業の起死回生の一手になりやすい。

ビジネスモデルタイプの典型的な事業がDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)だ。15年ほど前に神田昌典によりアメリカから輸入されたこのモデルは、従来のマス広告という概念を覆し、ダイレクトレスポンスを取る(イメージ広告ではなく、お客さんのリストをダイレクトに取得する)ということに特徴があった。

これにより、経営が数値化可能で、小予算で小回りの利く経営が可能となり、中小企業が1商店を脱し、商圏を拡げて飛躍する手法として大ブレークした。

また、一人のコピーライターが反応率を取れるビラを一つ作ると、何度でも繰り返し広告を打てるため、営業マンの質・教育や人材の質がそこそこであっても、企業として10億円程度までは飛躍できるという、過去無かった手法として定着した。

10億円の壁を超えるには、人事評価システムや情報共有システム・IT化に投資を行わなければならず、またお金だけでなく理念や人材管理の仕組化が必要になるのだが、マーケティングを仕組化・定式化するというところでこのDRMは貢献した。

他に、マイクロソフトやカラオケチェーン、その他飲食等、新しビジネスモデルと仕組化で市場を塗り替えた企業は多い。

「仕組化」がキーワードとなるこのビジネスモデルタイプは、ITやその他経営管理ツールの発展と相まって更に重要性を増した。

このタイプの特徴は、図にある通り、資本集約型ではなく知識集約型に近く、小規模の予算から成熟した市場のニッチを狙う事や、新しい仕組みで新しい需要を掘り起こすことが出来るため、成熟産業をブレークスルーする手段にもなりうるところだ。

3:商品開発タイプは経営者が全資源を集中してただ一つの商品を作る。

このタイプは非常に面白い。この商品開発というのは、経営者の実力が如実に経営に活きてくる。

スティーブ・ジョブズは社内の組織管理など顧みずに(アップルストアは例外として)、その独裁政治によってiPod、次いでiPhoneを開発した。

ここで大事なのが、京セラ(組織マネジメント)やSONY(ビジネスモデルタイプ)等とは違い、各プロジェクトの「マネジメント」によってシナジーにより市場ニーズを満たすという事を行わないことだ。

経営者の独断と偏見により、商品を作る。

このタイプには、Googleのようにまずは創業者が商品を作るタイプも、Appleのように大きな状態から商品を作るタイプもある。

このタイプの経営者が作る企業の特徴は、「その1つか2つの商品が課金ポイントとなり、それに付随する経済圏の生成や最適化を組織が行う」ということだ。

たとえば、Googleはセマンティック検索により、「トラフィックさえ集めたら売り上げが上がる」という商品を作り上げた。

従業員は、課金ポイントのイノベーションは難しいが、課金ポイントが出来たところに面白い商品などは作れるのだ。たとえば、GoogleMapはツールとしては便利だが、課金ポイントを作るのは難しい。

課金ポイントは、GoogleMapによりもたらされたアクセスが、セマンティック検索に誘導されることによる(あるいは、単にGoogleブランドの強化だって長い目にみたらお金となる)。

iPhoneも独自の経済圏を築いたので、そのプラットフォームで開発者たちが盛り上がれば盛り上がるほどAppleは潤う。

この示唆は非常に強力で、ビジネスモデルタイプがいくら頑張ろうと、組織マネジメントタイプがいくら人を活用しようと、強力な製品一つに太刀打ちはできない。

そもそも、課金ポイントの設計は従業員には難しい。

目的関数を組織として与える事が難しいからだ。

では、従業員は「何」を出来て「何」をできないのか?

実は、「課金ポイントのイノベーション」というものは、組織内部から出てくることは難しいのだ。

何故なら、課金ポイントを自分で作れるならそれを収入源として従業員は独立するだろうし、企業体として課金を行っていくにあたり、やはり組織の力とか、新しいブレークスルーが無いとそれは改善しにくいのである。

そこで、商品開発タイプは「課金ポイントのイノベーション」を経営者が行い、それに付随する経済圏を優秀な従業員が「最適化」すれば良いことになる。

尚、組織マネジメントは、課金ポイントは割合明白だ。付加価値の源泉が従業員だから、従業員の接客とか、サービスとかに対して課金される。

iPhoneへの課金は、ネットワークとかiTunesとか、アプリとか、いろいろなものを統合せねばならない。セマンティック検索への課金も、検索システム自体が秀逸でなければならない。

以上、図から思いつくいくつかの示唆を考えてみた。

実はまだまだあるのだが、オペレーションマネジメント、財テク、インフラ等についても考えてみると面白いです。

そして我々財力が無い人は、資本集約型ではなく人材マネジメントとか、特にビジネスモデルや商品開発に行くしかない。

従って、目に見える課金ポイントを最適化して商売してやろうと思うのではなく、まだ見ぬ課金ポイントを求めて必要な商品や、ビジネスモデルを組み込んで行く起業家の方が大きな企業を作るだろう。

さて、最後にスティーブ・ジョブズに関する逸話を書いてこの記事を終えたい。

スティーブ・ジョブズは若かりし頃Appleを創設し、成功ののち、しばらくして役員たちとの衝突によりAppleを追い出された。

ドラッカーは追い出される前の彼を見て「成功する企業家には、5年くらいの大企業でのマネジメントの経験が必要。

若くして成功すると傲慢になる。

彼は必ず失脚する」と考えていた(事実そうなった)。

そして経験を積み、組織に戻ったスティーブ・ジョブズは、iPodにより見事Appleを再建した。

上記6タイプは、経営者の時間の使い方を示唆する。

組織マネジメントタイプは下を見て経営理念を説き、ビジネスモデルタイプはビジネスの仕組みづくりに時間を使い、商品開発タイプは商品の設計図と青写真作りに時間を使う。

組織マネジメントでうまくいかなくなってきたら、仕組を作れ。

仕組だけで太刀打ちできなくなってきたら、経営のかじ取りを行うか、全社を賭けて商品を作れ(SONYがウォークマンを作ったように)。

確かに、商品開発タイプは組織マネジメントが本分ではない。

青写真作りとその遂行が仕事だ。

ただ、それだから傲慢で良いということでもない。

経営とは顧客貢献だ。

顧客のために組織マネジメントをすることもあれば、仕組みを作ることもあれば、商品を作ることもあるだろう。

そのために、仲間も必要、組織も必要、仕組みも必要だ。

従って、自分の思考、役割を考え、「今ある売り上げを追い求める」のではなく、その先にある自分の役割、時間の使い方、組織に必要な方向性を考えよう。

社内政治に明け暮れざるを得なくて、組織を方向づける事が難しい経営者を見ると、たまにこんな感じで視点を変えてみるのも良いのではないだろうか、と思う。

そんな「経営者6タイプ」の図。

経営者6タイプ