高額コンサルタント「フロイト」が高額診療と冷たい態度でも効果を上げた理由

高額コンサルタント「フロイト」が高額診療と冷たい態度でも効果を上げた理由

精神分析の大家、フロイトとコンサルタントの関係について。

フロイトは何でもかんでも無意識下の性的衝動に原因付けるワンソリューションの理論を患者に上から目線で語り、高額診療で繁盛し(て医学会の一部から批判を買っ)たという。

これって一部のコンサルタントと同じだなと。

つまり、理論の正しさは置いておいて、自己憐憫に陥っているクライアントに別の見方と行動を与えるということだ。

人を動かすには、神性と魔法使い性が必要と思っている。

即ち、「私の言うことは正しいですよー」とうのと、「あなたはこれこれをしたら、こうなりますよー」という未来への展望だ。

これが揃うと、クライアントは「この人の言うことを信じてみよう」となる。

この点において、フロイトは成功していたと思うんだよね。

当時ウィーンの学会で常識とされていた「困窮患者への無償奉仕」をせず、誰かれ構わず高額診療した(本人の弁では、高額であるほど効果があるという。

事実、精神分析に関してはそういう側面もあった)ことと、これまた学会の常識だった「親身な診療」をせず、患者には思いやりは愚か関心さえ持ってはならないとした(本人の弁ではについては、依存を起こさせ治療と回復を遅らせるとのこと。

これもまた一定の成果が見られた)ことは「神性」の発揮に。

そして、何でもかんでも性的衝動のせいにすることは、例えば「あなたの精神疾患は幼少期のトラウマ、根本としては性的衝動が原因です!」という断定については、精神や自己理解について、本人が別の認知をすれば、当然状態は変わる訳で(また、その遷移後の認知状態は、診療前の最悪な状態より改善している可能性が高い訳で)、これはクライアントに能動性を起こさせる「魔法使い性」の発揮と関係しているということだ。

ただし、当時の医学会は、細菌学などが解明されてきた時でもあり、病気は悪魔の仕業というワンソリューションではなく、病状ごと、患部ごとに個別の原因があるとする理論により発展を遂げたばかりだったら。

そのため、ワンソリューションで精神疾患をぶった切るフロイトの理論には賛同できないという人も多かったという。

しかし、今日でもフロイトの本が残っている理由は、やはりその手法には一定の成果があったからであろう。

ただしそれは、精神医学以外の領域でも正しかったか、同じような成果と効果を成し得たかと言うと、疑問の余地がある。

例えば、疫病や外科の領域では、やはり個別機序の探求(ペニシリンの発見的な)や、無料診療(医者の倫理的な)、患者への親身な対応(マザーテレサ的な)が社会的にも職業的にも求められていたし、正しいう態度だったと思う。

高額診療のマンガ「ブラックジャック」の作者手塚治虫がフロイトにどれ程の影響を受けたか、また意識していたか分からないけど、あの漫画はやはりヒーローを生み出すために作者が創作した設定だろう。

ブラックジャックを現実化するには、精神分析医の方がしっくり来るのかもしれない。

但し、精神分析医として様々な精神疾患に対し、性的衝動を説いて認知を変えさせるブラックジャックは、あのマンガで描かれているヒーロー像とは少し違ってしまうが、、。

また、ブラックジャックがいたらいたで、今で言う本当のお金持ち向けの高額凄腕外科医ということである意味流行っていたのかもしれない。

ただそれは、ヒーローというよりは、どうしても金儲け主義の「今風の医者やなー」という認識になってしまうかもしれない。

希少性というよりブランドで売り、客を選択する性格の悪い商売人に見えてしまったかもしれない。

この思考実験の帰結は、ブラックジャックの担当した外科手術が、ウォンツというよりはニーズ、贅沢品というよりは、社会の必要品として認識されていることと無関係ではない。

今や当たり前とされている、ある程度高いレベルの外科手術で高額を取ることは、誰もが必要と認識するナイジェリアへのエボラ出血熱の必要な薬として、富士フイルムあたりが治療薬を法外な値段で提供することへの違和感に似ている。

従って、それの提供が当たり前であるとクライアントが認識すればする程、高額な値段をつけることへの嫌悪感は高まっていく。

昔、お金儲けは怪しさとまっとうの間と表現した人がいた。

まっとうすぎるとお金が取れず、完全に怪しくてもダメという意味だが、それはこの価値の知覚と妥当性、顧客の商品選択性などの性質を表す。

まっとうな領域での高品質化はコモディティ化を招くのでブランド化が必須となるが、少々怪しい領域なら、多少品質で劣っていても顧客の選択性が残るので、高くても売れてしまう場合も出てくる。

そんな訳で、フロイトは、未開だった精神分析という領域での成功をし、外科や疫病という奉仕性が重要な領域以外で道を切り拓いたという意味でも、商売としても学者としても無意識的にか、意識的にか、戦略的やなぁと思った次第。

ただ恐らく、フロイトが高額診療費を取ったのは本人の「貧乏だった」というトラウマ(実際は中流上層家庭で育つが、父親に対する葛藤があった)による「フロイト的錯誤」つまり誤った事実認識、コンプレックスも関係していることと、フロイトの兄弟はみな成功し、フロイト自身も優秀な人であった事は間違いないので、外科や細菌学者などの道を選んでいても、一定以上の成功を収めながら、高額路線を取った気がするという話でした。